アニメはたくさんの夢を見せてくれます。その中でも実際に乗ってみたいと思った乗り物はありませんか?
世界を席巻する日本アニメにおいて、外せない乗り物と言えばドラゴンボールの“筋斗雲”でしょう。主人公の孫悟空が「筋斗雲!」と叫べば、どこからともなく飛んできて、悟空の意思がそのまま伝わり好きなところへ運んでくれます。
スピードは飛行機よりも速く時速1800km、心が清らかな人でないと雲をすり抜けおちてしまうという特性もありましたね。この“筋斗雲”が、実際に手に入る時代がそこまで来ています。雲に取って代わるものはクルマです。スピードも筋斗雲ほどはでませんが、心が清らかな人でなくても乗ることができます。
筋斗雲の特徴と言えば
の3つです。
こういった夢は実現するのか?クルマが叶えてくれる未来を探っていきます。
セルゲイ・ブリンは写真中央, via EricSchmidt, SergeyBrin and LarryPage by JoiIto, on Flickr
Googleの共同創業者であるセルゲイ・ブリン氏は
と語っています。
グーグルと言えば検索エンジンなどのインターネット関連事業で成長してきた企業です。今までの自動車のイメージを根底から覆すような内容を、異業種畑のトップが発言した理由は何でしょうか?
実は現在、自動運転技術の先頭を走っているのはグーグルです。2010年に自動運転への進出を発表以来、各州で公道実験の許可を得て実験走行を実施。地球を20周以上できる距離を走行し、いまだ無事故です。
自動運転において同社の強みはグーグルマップ開発によるマップ技術と、モバイルOS開発によるクルマを制御するソフトウェアの技術です。近年、ネバダ・フロリダ・カリフォルニア州などで外出すればクルマの上に円錐型のレーザーレーダーを乗せて公道を走るグーグルの自動運転車を目にすることができます。
さらにグーグルは今年2014年の5月27日に自動運転車のプロトタイプを発表しました。人はクルマに乗ってスタートボタンを押すだけです。ハンドル・アクセル・ブレーキはなく、運転中も完全に人の操作を必要としません。2020年頃までの実用化を目標としています。
Googleの自動運転車の解説とシミュレーション
そしてまた、その自動運転の一翼を担う技術が今年中にも私たちの手元に届こうとしています。スマートフォンの両巨頭OS企業のもう一社、Appleが昨年発表した「iOS in the car」がそれです。
カーナビやETCなどの「通信・情報系」のテレマティクスはクルマとの相性があまりよくありません。それぞれの業界の変化速度の違いが大きな理由です。ハイテク業界では1年前のハードウェアや3ヶ月前のソフトウェアがすでに型遅れとなります。ところが、クルマのマイナーチェンジは海外だと7年ほど、国内でも早くて4年です。つまり、新車を購入しても、数年後にそのクルマに搭載されていたハイテク技術は“かなりの型落ち”となってしまう訳です。
このギャップを大きく埋めるのが「iOS in the car」です。今年、正式名称を「CarPlay」と変え、iPhoneの機能がそのままクルマに搭載可能となり今まさに注目を浴びています。その中でも話題を集めているのは音声操作秘書機能「Siri」の使い勝手の良さです。
Apple CarPlay by BestMotoring.CN, on Flickr
ナビや予定の確認、電話やメールもすべて運転しながら「クルマとの会話」で可能になる訳です。当然、エンターテイメントに強いアップル製品が、音楽などでクルマの中を快適にしてくれることは言うまでもありません。
対してグーグルも、Android OSを搭載したデバイスがそのままクルマで利用できる「Android Auto」搭載の新車を2014年中に発売すると発表しました。こうったシリコンバレーのテレマティクスへの進出はクルマの歴史において稀に見るほど急激な変化をもたらしています。
自動運転車は大きく2つの技術に分かれます。1つはここまでお話ししてきたテレマティクスなどを含めた「通信・情報系」です。もう1つがクルマの原点である走る・曲がる・止まるなどの「駆動・制御系」です。「駆動・制御系」は既存の自動車メーカーに一日の長があります。約2万とも3万とも言われる部品から成り立つクルマは簡単に作れるものではなく、実際グーグルが実験を重ねている自動運転車の多くはトヨタ車です。
日本の自動車業界も昨年にはすでにトヨタ、日産、ホンダの3社が自動運転試作車の公道実験を開始。これも実用化は2020年頃が目処です。それに先立つ2012年には国土交通省が「2020年代初頭に実用化を目指す」検討会を開始しています。
参考:2013年10月「オートパイロットシステムの実現に向けて中間とりまとめ(PDF)」オートパイロットシステムに関する検討会
移動中に操作をしなくてすむ未来はもう目と鼻の先なのです。
こうった自動運転技術の発達によって、自宅から駐車場へマイカーを取りに行く必要はなくなります。また出先でもマイカーを呼び出せるようになります。孫悟空が「筋斗雲!」と叫ぶように、手元のiOSやAndroid OS搭載のデバイスを操作するだけです。
また、先ほど紹介したGoogleの共同創業者であるセルゲイ・ブリン氏の「道ばたで呼び止めて、好きなところへ連れて行ってくれる」との発言はクルマのシェア化を示唆しています。
こういった発言にみられるように、自動運転車の実用化に向けて様々な予測が立てられています。
さらには、クルマ同士が勝手にコミュニケーションを取り、交通管理システムと道路にある施設が整備され、限りなく事故の少ない交通社会が実現するでしょう。そして、クルマの活躍する舞台は路面だけではなくなります。
2020年頃には一般人を乗せた自動運転車が公道を走ることは疑いようのない未来ですが、同じ2020年頃に実用化されようとしている技術があります。それが空飛ぶクルマです。米国のベンチャー企業テラフギア(Terrafugia)が生み出したクルマ「TF-X」は、離発着が自動操縦可能で飛行機とヘリコプターとクルマを合体させたような空飛ぶクルマです。
2013 Terrafugia TF-X by Eddie Phạm, on Flickr
現在発表されている内容としては、ネットワークと接続され飛行経路は自動制御、時速300kmのスピードで800kmの距離の飛行が可能となっています。ちなみに、この「TF-X」は次世代機で、先に開発された空飛ぶクルマ「トランジション」はすでに同社ホームページで購入予約を受付しています。クルマがアメリカの空で見られる日はもうすぐです。
自動運転技術の開発が進めば、空飛ぶクルマの自動操縦もさらに進化します。空飛ぶクルマが完全自動操縦になるのはさすがにもう少し先ですが、昨今の加速度的な進化を見てもそれほど遠い未来ではないでしょう。
ドラゴンボールの筋斗雲の元ネタは中国古典の西遊記です。その西遊記が成立してから400年が経ちました。また、今のクルマの形「T型フォード」の登場、有人動力飛行の成功から100年です。世界はこの間、劇的な進化を遂げてきました。
「何か」が急激に進化を遂げる裏には様々な業種の融合が必ずあります。
例えばスマートフォンは携帯電話の進化とともにインターネットとの融合が図られ劇的に発展・普及しました。20年前は携帯電話がまだ珍しくポケットベルが主流で、インターネットではなくパソコン通信をしていた頃です。それが今では携帯電話でネットに繋ぐのが当たり前になりました。
クルマも同じく、ここ数年で大きく変化しています。クルマが筋斗雲になる日はすぐそこまで来ています。